初めて専門学校の実習室に入ったとき、ずらりと並んだパン道具を見てワクワクしたのを覚えています。
竿秤やスケッパー、発酵カゴ‥。どれも最初は使い方がわからず戸惑いましたが、次第に「これがないとパン作りは始まらない」と感じるほど大切な存在になりました。今回は、そんな専門学校や現場で実際に使っていた代表的なパン道具を紹介します。
竿秤
竿秤(さおばかり)は、主に分割したパン生地の重さを量るための道具です。
デジタルスケール(調理用のデジタル式の秤)とは違い、針の動きでバランスを取る仕組みになっていて、使うたびに”職人らしさ”を感じられます。最初は扱いにくく感じますが、慣れると手早く分割できるようになり、作業スピードの向上にもつながります。
最近ではこの竿秤を使うお店は少なくなってきていますが、手作業の感覚を大切にする現場では今も根強く愛されています。
スケッパー(カード)
スケッパーは、生地をまとめたり切り分けたりと、現場でさまざまな場面で活躍する道具です。
材質は「金属」と「プラスチック」の2種類があり、金属のスケッパーは主に生地の分割に使用されます。軽量で片手でも扱いやすく、パン生地を素早く切ることができますが、金属製のため扱いには注意が必要です。一方、プラスチック製のスケッパーは「カード」や「ドレッジ」と呼ばれることも多く、ボウルや番重から生地を剥がしたり、生地をまとめるときに使われます。分割にも使えますが、金属製に比べると切れ味はやや劣ります。
用途が幅広く、さまざまなシーンで活躍するため、現場では欠かせない道具のひとつです。
発酵カゴ(バヌトン)
発酵カゴ(バヌトン)は成形して生地を入れて発酵させるためのカゴです。
主にハード系の生地やカンパーニュなど、発酵途中でダレやすいパンの最終発酵時に使用します。パン生地の型崩れを防ぎ、焼き上がりの形を美しく整えてくれる大切な道具です。学校で初めて使ったとき、「これでカンパーニュのあの模様ができているんだ」と感動したのを覚えています。
籐で編み込まれた発酵カゴは湿気に弱く、カビやすいため、使用後はよく乾かし、風通しの良い場所で保管するのがおすすめです。
温度計
温度計は水の温度、生地の温度などを測るための道具です。
パン作りにおいて「温度管理」はとても重要なポイントの一つ。仕込む生地の種類や季節によって、目標とする捏ね上げ温度が変わるため、毎日、仕込み水や捏ね上がった生地の温度を細かくチェックする必要があります。
感覚ではなく数値で確認することで、失敗を防ぎ、安定した品質のパンを作ることができます。
麺棒
麺棒は、パン生地を均一に伸ばしたり、成形時に形を整えたりするための道具です。
単に生地を伸ばすだけでなく、同じ厚さで均一に力を加えながら生地を伸ばすためには麺棒が欠かせません。正しく使えるようになると、生地を傷めずに均一に伸ばすことができ、パンの仕上がりや品質の安定にもつながります。
また、綿棒にはさまざまな大きさや重さのものがあり、生地の種類や大きさに合わせ使い分けることで、作業効率も向上します。
パン作りを支える、相棒たち
パン作りの道具は、どれも一見地味ですが、使いこなすほどに奥が深いものばかりです。学校や現場で毎日触れてきた中で、「これがあるからパンが作れる」と実感した道具を紹介しました。
まだ紹介しきれない道具もたくさんあるので、また今後の記事で”家庭で使えるパン作りの強い味方”も紹介していく予定です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、パンの世界少しでも身近に感じてもらえるきっかけになれば嬉しいです。


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