専門学校での授業や実習にも慣れてきた頃、いよいよ現場で学ぶ「インターン実習」が始まりました。
“学校で学んだことがどこまで通用するんだろう”ーーそんな思いを胸に、緊張と不安が入り混じった気持ちで初日を迎えたのを覚えています。
実際の現場では、授業では見えなかったスピード感や空気、そしてプロの意識の高さに圧倒されることも多くありました。
この記事では、インターンでのお店選びや期間中に感じたこと、学んだことを振り返りながら、現場でしか得られなかった経験についてお話ししてきます。
パン職人の世界へ踏み出す。インターン概要とお店選び
私が通っていた専門学校は1年制だったため、入学してから約3ヶ月後の夏休み期間中に、10日間インターン実習が行われました。在学中のインターンはその1回のみで、そのインターン先で就職先を決めるというケースも多くありました。
お店選びは生徒が自由に希望を出すことができ、その希望先の店舗に対して担任の先生が受け入れ交渉をしてくれるという仕組みでした。インターン期間までにすでに就職先が決まっていた生徒もいましたが、私はまだ決まっていなかったため、自分が働きたいパン屋をイメージしながらお店選びを進めました。
まず、ホテルのベーカリーや百貨店に入っているような大手のベーカリーで働くイメージが湧かなかったので、「小規模のお店であること」。そして、何か強いこだわりや信念を持っているお店に魅力を感じていたので、「こだわりのあるお店」。この2つの条件を重視して探しました。
その中で、ひとつ気になるお店に出会いました。郊外にあり、電車を乗り継ぎ、駅から20分ほど走って向かわないと始業時間に間に合わないという過酷な条件でしたが、「この一度きりのインターンを妥協したら絶対に後悔する」と思い、そのお店に決めました。
緊張の初日、プロの現場に立って感じたこと
当日は「絶対に遅刻できない」というプレッシャーから、予定よりずっと早く目が覚めたのを覚えています。お店に向かう電車の中では胸がいっぱいで、とにかく挨拶をしっかりすること、受け答えをハキハキすること。それだけを考えていました。
お店に到着した頃には、すでに作業が始まっており、現場には緊張感が漂っていました。軽く自己紹介を終え、私は成形ポジションに入り、成形の補助を担当しました。学校では触ったことのない高加水の生地や、授業とは比べ物にならないほど速い現場の動きに「これがプロの現場か」と圧倒されたのを今でも覚えています。
わからないことは積極的に聞かなければと思いつつも、声をかけるタイミングがわからない。自分の動き一つひとつが合っているのか気になり、終始緊張しっぱなしの一日でした。
初日は自分の未熟さを痛感しながらも、スタッフの皆さんの温かいご指導のおかげで、なんとか無事に終えることができました。精神的にも肉体的にもクタクタでしたが、どこか心地よい疲れと小さな達成感が残り「明日も頑張ろう」と前向きな気持ちで帰宅しました。
現場で見て、触れて、感じたこと
インターン先では、さまざまな仕事を経験させていただきました。成形の補助、材料の仕込み、商品の品出しなど、どの作業も新しい発見があり、とても勉強になりました。
私がインターン先に選んだお店は「材料へのこだわり」が強く、まさにその姿勢がお店のコンセプトに表れていました。自家製ベーコンは契約農家の豚を一から飼育したものを使用し、野菜もほとんどが地産地消。とうもろこしはボイルした後に一粒ずつ包丁で丁寧に外し、にんにくもチューブではなく一つひとつ手で皮を剥いて使っていました。
一つのパンを作るために、ここまで手間を惜しまない姿勢に“職人の凄み”を感じる毎日でした。仕込み作業は大変で、毎日ヘトヘトになるほどでしたが「この美味しいパンを作る歯車のひとつに自分も加わっている」と思うと、不思議と誇らしい気持ちになっていました。
プロの現場で気づいた“パン職人”という仕事の本質
現場で強く感じたのは、「いかに視野を広く持ち、チームとして効率よく動くか」ということでした。学校の実習では、特にポジションが決まっておらず、全員で仕込みから焼成までを担当していました。しかし現場では仕込み・成形・窯・サンドとそれぞれに担当が分かれ、全員が連携しながら一つの流れを作っていました。その姿を見て、チームで仕事をすることの大切さを改めて実感しました。美味しいパンを多くのお客様に届けるには、一人の力だけでは決して成り立たない。そう感じた瞬間でした。
そして何より印象的だったのは、スタッフの皆さんがお店のコンセプトやシェフの想いを理解し、同じ方向を見てパンを作り上げていたことです。その姿に深く感動しました。
学びを糧に、次の挑戦へ
この10日間のインターンでは、たくさんの学びがありました。チームとしての動き方や技術面、そして仕事に対する考え方など、学校の実習だけでは得られない経験ばかりで、とても濃い時間を過ごすことができました。
インターン中には、先輩方に進路の相談もさせていただきました。ホテル系ベーカリー、企業系ベーカリー、個人店ーーそれぞれの良さや特徴をリアルに教えていただき、自分の将来を考えるうえでとても参考になりました。
また、ある先輩からいただいた言葉が今でも心に残っています。「君は周りの学生より7歳年上。逆に言えば、7年遅れている。この事実をしっかり理解して、日々の学びに繋げてほしい。もっと前のめりに、がむしゃらに勉強しなさい」その言葉を聞いて、自分の中でスイッチが入ったように感じました。
インターン後の授業では、先生方から「すごく成長したね」と声をかけていただくことも増え、あの10日間が自分を変える大きなきっかけになったと実感しています。限界を決めずに貪欲に学ぶ姿勢こそが、自分を成長させてくれるのだと感じました。
このインターンで得た学びを胸に、次は自分の働く場所を見つけるための就職活動へと進んでいきました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事はインターン先での経験や学びについて書かせていただきました。少しでも参考になれば幸いです。


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